広島高等裁判所岡山支部 事件番号不明 判決
主文
本件各控訴は之を棄却する。
理由
弁護人岡崎耕三の控訴趣意第一点について。
原判決は法令の解釈並に適用を誤つた違法があるというのであるが原判決が被告人等の判示所為に対し臨時物資需給調整法第一条、第四条、衣料品配給規則第五条を適用せざること所論の通りであるが、右衣料品配給規則所定の配給割当公文書の引換を要するは適法に生産されたる衣料品が正常のルートを通じて販売譲渡される場合にのみ限るものであつて本件の如き所謂闇物資は取締の対象外にあるとの所論は前記法令の精神を無視したる弁護人独自の見解であつて、右衣料品配給規則第五条の衣料品とは生産材中古品及消費者の所有するものを除き商工大臣の指定する一切の繊維製品を指称すること同規則第一条に明定するところであつて同第五条但書所定の場合の別に除外例はない従つて正式のルートを通して配給せらるるものと否とを問はず一切の指定繊維製品は同条適用の対象となるものと解す、然らざれば前記法令の企図する取締の目的は達せられない。前示趣旨臨時物資需給調整法第一条及前示配給規則を通して肯定せらるる。従つて原判決には所論の如き違法はない、論旨は理由がない。
(弁護人岡崎耕三の控訴趣意)
第一、被告人村上正について。
(一) 原審判決は法令の適用について誤りがある。
原審判決は「被告人村上正は織物業者であるが法定の除外事由がないのに所定の割当公文書と引換えないで……(一)……被告人山本賢右に対し指定繊維製品である白綾木綿生地原反五十碼を代金一万七千五百円にて売渡しと判示し右に付て臨時物資需給調整法第一条、第四条、衣料品配給規則第五条を適用擬律したものの如くなるも、凡そ右規則所定の割当公文書の引換を要するは適法に生産されたる衣料品が規則所定の正常ルートを通じて販売譲渡される場合にのみに限らるべきものであることは規則自体の精神により肯認せられるところのものであつて既に最高裁判所の判例にも示されている次第である。
然るに原審判決はこの点の認識を誤り所定の割当公文書(原審判決によれば所定の割当公文書とあるも如何なる公文書を指すのか不明であるけれども)を要するとなしたのは明かに法の解釈を誤り法令の適用について重大なる過誤を犯しているので原審判決はこの点よりして破棄されるべきものと考へる。